第6回 医療と創造性及び世界平和シンポジウム-医療とテクノロジー

第6回-医療と創造性及び世界平和シンポジウム-医療とIT

日時:2021年11月14日 午後1時-4時
場所:東京国際交流館 3F
参加人数: 150名
主催:CIM
共催:ナンバーワンソリューションズ、IHM
テーマ:「医療とテクノロジーの統合」

構成:
来賓挨拶:ドクター中松
Ⅰ部:基調講演 「生命とは何か~ポストコロナの生命哲学~」福岡伸一先生
Ⅱ部:パネルディスカッション「医療とテクノロジーの統合:現場からの提言」
1「スーパーコンピュータを用いた医療とテクノロジーの統合」宮野悟先生
2「幸福度測定技術の医療への応用」 青木和広先生
3「セキュリティ技術が変える医療の未来」 面来哲雄先生
Ⅲ部:総合討論「未来の予防医療~医療が創造する平和な世界~」

ドクター中松先生からは、CIMのビジョンとミッションに共鳴して頂き「スジ(創造性)、ピカ(勘)、イチ(実用性)」の重要性を強調され、短いながらもインパクトのある挨拶を頂きました。

第1部:基調講演
福岡伸一先生は、ポストコロナ時代に必要な生命哲学として機械論的な生命観から、動的平衡という関係性の中で相補性を持ちながら絶えず変化している生命観への転換が願われているという主旨の基調講演でした。多くの示唆に富んだ内容でした。
続いて、第2部のパネルディスカッションでは、3人の先生方から発表が有りました。
癌の遺伝子解析研究のパイオニアである宮野先生からは今回のテーマである「医療とテクノロジーの統合」に関して、スーパーコンピュータを用いて癌の遺伝子変異を調べて治療に結びつける事が可能になってきているという最先端の話を分かりやすく伺いました。
青木先生からは、心の健康(幸福度)と癌の進行との関連や口腔内細菌と発癌との関係性が言われてきているので、癌発症のバイオマーカーとして口腔内細菌と幸福度とを合わせる事で、癌発症の予見ツールに使えるようにしたいという内容でした。
IT関係者のナンバーワンソリューションズの面来社長からは、理想の医療を追求するために、日本における課題として法律の壁とセキュリティ技術が遅れており、優れたセキュリティ技術を使って医療データプラットフォームの構築を目指して国内外での展開を視野にロードマップが示されました。

3人の発表を通して、医療とテクノロジーの統合により、医療データプラットフォームが構築されれば、情報の共有が進み、理想の医療に近づいていく予感があり、とても希望的なお話しでした。
第3部の総合討論は、「未来の予防医療~医療が創造する平和な世界~」をテーマとして、今回参加の福岡先生、宮野先生に加えて、第2回名古屋で開催された「医療と音楽の統合」でイグノーベル賞を取られた「オペラ椿姫」の講演をして頂いた新見正則先生、第3回大阪で開催された「医療と青少年教育」でマルトリートメント(不適切な養育)のMRI画像を紹介して頂いた福井大学の藤澤隆史先生、第4回札幌で開催された「医療と家庭の健康」で冷えは万病の元のお話をして頂いた石原新菜先生、第5回福岡で開催された「医療と武道の対話」で実演と対談でお話し頂いた武術研究家甲野善紀先生の6名の先生方に対して此方から各先生に質問する形で行いました。
福岡先生には、AIが持っていない人間の創造性について質問し、生命は壊すことを優先しているが、AIは蓄積する一方で、壊してはいない事、又膨大な履歴の中からディープラーニングによって最適解を探す。AIは2点を結びつけるのが得意だが、人間のような知性やひらめき、創造性は無い事、人間にはデータや履歴にないものから新たな物を生み出すコネクティング・ドッツ(結節点)があり、壊して創造する事が出来るので、2045年に起きるとされるシンギュラリティ(技術的特異点)も恐れるに足りないと話されました。
新見先生には、テクノロジーが進歩していくと将来東西医学の統合が可能かどうか質問し、東洋医学の欠点はエビデンスが不足していることであるが、早晩テクノロジーの進歩で克服されるが、そうした世界を善とするかどうか、将来とんでもない事起こるかもしれないが、問題はそれを消化する複眼的思考を持っているかどうかどうかであり、些細なこと、エビデンスの無い事も大切にする必要がある事を強調されました。
マルトリートメント(不適切な養育 )の専門家である藤澤先生には健全な社会を造るための行政の取り組みに関して伺い、うつ病の子どもの心の背景や環境要因、発達史を聞き取るカウンセラーの不足とそうした兆候を見える化する客観的な指標、マーカーが無いので、もしあれば医療者同士で共有出来れば前駆的な段階でも可能となり、テクノロジーの進歩でこれを補うことが可能と考える旨発言されました。
石原先生には健康教育のあり方についてお聞きし、漢方、生活習慣の指導、断食道場の3本柱で予防医学を推奨しているが、家庭教育の場で実践出来れば良いと答えられました。
甲野先生には医療と武道の統合で期待されることについて質問し、ひもトレ革命という組紐を用いた実演指導があり、気を感知する人間のセンサーの働きを実証されました。
最後にコロナ禍によりグローバルな対応が求められる今、若い医療者に何を遺すのか、健康教育はどうあるべきか、医療が平和な世界を創造・構築するための提言をそれぞれの先生に伺いました。

新見先生:誰もが情報を発信出来る時代。良い物は積極的に取り組んでいくべき。
藤澤先生:孤立を避け、コミュニティの力を上げる。テクノロジーが補う。東京都のお節介運動等。
石原先生:健康が全てで、その為の養生という予防医学が大切。世界平和もここから。
甲野先生:今こそ死生観を問うべき時。
宮野先生:医療は単なるテクノロジーではない。データサイエンス=知恵を活用し、予防医学に役立てる。テクノロジーが支援する。
福岡先生:コロナが無ければ無縁であった死生観、哲学に関して考える時。
心身二元論、機械的生命観から、漢方は複合物質からなっており、服用することで新しい動的平衡を獲得すると言う観点で生命とは何か?を考える時。

まとめとして、本シンポジウムの提言を紹介し ①医療がテクノロジーの進歩を取り入れながら、生命に対する倫理観を確立する
②創造性を持って東西医学の統合を目指す
③新しい健康教育のあり方を検討し、予防医療を推進する
④健康な個人、家庭、健全な地域社会・コミュニティを造成し、平和な世界、地球環境を守る医療を目指す
2021年を締めくくる実り多きシンポジウムとなりました。

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